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聞いたことある!1980年代の資生堂CMソング13選【シティポップ視点でセレクト】

資生堂

今回は1980年代の資生堂キャンペーンのタイアップで作られたCMソングの中から、シティ・ポップのテイストが強い楽曲を厳選して紹介します。

当時を知る人、知らない人のどちらでも、今ではありえない優雅な世界観に浸ってください。

1980年代資生堂CMソング 13選|シティポップ・マニアが厳選

シティ・ポップ視点で選んだ資生堂CMソングは次の13曲です。

  1. 不思議なピーチパイ
  2. ニートな午後3時
  3. A面で恋をして
  4. 気分はフェアネス
  5. う・ふ・ふ・ふ
  6. くちびるヌード
  7. その気×××(mistake)
  8. ニュアンスしましょ
  9. メトロポリスの片隅で 
  10. 色・ホワイトブレンド
  11. くちびるスウィング
  12. 椿姫の夏
  13. 彼女とTIP ON DUO

一曲ずつ詳しく見ていきましょう。

不思議なピーチパイ/竹内まりや

1980年春の資生堂ベネフィークキャンペーンソング。

資生堂宣伝文化部出身のコピーライター・土屋耕一が考案したキャッチコピー「ピーチパイ」をもとに作られた楽曲です。

作詞:安井かずみ、作曲:加藤和彦の夫婦コンビによる提供作品。

当時の資生堂は、広報誌にCMで使った楽曲の楽譜を載せていました。

ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔は、少年時代にその楽譜を見たのをきっかけに「不思議なピーチパイ」で音楽のコードの仕組みを覚えたと語っています。

「このCとCmはどう違うのだろう。7と△7というのがあるけど、どういう事なんだろうか?」ピアノを弾きながら、自分でもびっくりする程の集中力と推理力が働き、曲を歌いながら、何度もトライ&エラーを繰り返した私は、なんと、昼過ぎから始めて、晩御飯だと母親に呼ばれる頃には、コードが全て読めるようになっていたのです。

<花椿>で<コード進行>を覚えた日

イントロのコード進行は80年代に流行したオーギュメントのクリシェ。「C⇒Caug⇒C6」といった具合に度数が1度ずつ上がっていきます。

サビに行く直前の「不思議な 不思議なピーチパイ」の部分もセカンダリー・ドミナントで「Dm7」から「D7」になってウキウキ感を出すという仕掛けがあって、確かにコード理論を知るにはもってこいの楽曲です。

イントロやBメロがよく動くコード進行に対してサビはシンプル。派手な展開はありません。

実はこの盛り上げ過ぎないサビこそが加藤和彦の真骨頂で、化粧品のCMのエレガントなイメージにピッタリハマったのです。

こうした1950年代を意識した楽曲はアメリカン・グラフィティーのようにワイワイ賑やかな世界観になりがちですが、加藤和彦が作ると抑制が効く。

ちょこちょこコードは動くものの、全体を通してダイナミックなコードの動きはありません。

「盛り上げ過ぎずに印象的な歌メロを作る」という点で加藤和彦は、南佳孝、大瀧詠一と並ぶ名手ではないでしょうか。

ちなみに加藤和彦と竹内まりやは同年にテレビ番組「アップルハウス」の司会で共演していました。

ニートな午後3時/松原みき

今や世界的に知られるシティ・ポップの定番曲「真夜中のドア〜Stay With Me」を歌った松原みきによる1981年春の資生堂ルアキャンペーンソング。

小田裕一郎のブルージーな楽曲を大村雅朗がグルービーにアレンジしています。

ここで歌われている「ニート」とは「Not in Education, Employment, or Training」の略称「Neet」ではなく、洗練された着こなしを意味する「Neat」です。

とはいえ、当時ニート・ファッションを好んだ人は大人になりたくない「クリスタル族」。だとするとどっちでも変わらないような気もします。

A面で恋をして/ナイアガラトライアングルVol.2

1981年資生堂サイモンピュア バランシングゼリーのCMソング。

この楽曲タイトルも「ピーチパイ」と同じくコピーライター・土屋耕一の考案です。

もともと大瀧詠一のソロ名義で依頼され、断るつもりだったのがキャッチコピーを聞いたらイメージが湧いてしまって引き受けることになったという一曲。

ちょうど松田聖子の「風立ちぬ」と時期が重なっていて、ヒットチャートに「作曲:大瀧詠一」が並ぶのを嫌った大瀧詠一は別名義で出すことに。

知人経由で知り合った杉真理、佐野元春を誘って「ナイアガラトライアングル」の第2弾としてリリースを決めました(第1弾は1976年に山下達郎、伊藤銀次らと制作)。

バディー・ホリーの「Everyday」をギミック的に引用、マシンガンやクラクションのSEが入るなど凝った作りになっています。

杉真理によると、レコーディングを他のミュージシャンに見せないことで知られていた大瀧詠一が、「A面で恋をして」のときだけ杉・佐野と一緒にスタジオに入り、どうやって録音するかを見せてくれたとか。

大瀧詠一という仙人が山から降りて俗世間と関わっていた。そんな特別な時期の作品です。

2022年3月21日には40周年記念盤が発売。先ごろ江口寿史のイラスト、「ストップ!!ひばりくん!」のカットが使用されたMVが公開されました。

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気分はフェアネス/山根麻衣

1982年秋の資生堂フェアネスキャンペーンソング。

山根麻衣は1979年のデビューのシンガー。一般的にはこの「気分はフェアネス」とアニメの主題歌で知られていますが、R&B/シティポップ界隈では高い人気を誇っています。

妹の山根栄子とともに斎藤誠、村田和人らと結成した21(トゥエンティ・ワン)での活動もシティポップ・ファンから高く評価されています。

雰囲気だけで押し切る広告コピーからつけた「気分はフェアネス」というタイトルがなんとも80年代らしいです。

う・ふ・ふ・ふ/EPO

1983年春のフェアネスキャンペーンソング。

シティポップ・ファンにとってはスタンダードな楽曲です。

分数コードでふわふわ浮く感じを演出したサビが春爛漫のムードを盛り上げてくれます。

くちびるヌード/高見知佳

1984年春のフェアネスキャンペーンソング。

EPOが提供、70年代後半から80年代前半にかけての「オリエンタル・ブーム」に乗ってヒットしました。

この作風が後年の「夢見ちゃいなタウン」につながっています。

歌っていた高見知佳は2022年夏の参院選に出馬すると表明。

かつて日テレの番組「追跡」で共演していた青島幸男と同じく政界入りの道を目指すようです。

その気×××(mistake)/大沢誉志幸

1984年夏の資生堂サンフレアキャンペーンソング。

まださほど名前が知られていなかった大沢誉志幸はこの楽曲で勢いに乗り、およそ半年後に「そして僕は途方に暮れる」のビッグヒットを飛ばしています。

大沢誉志幸と編曲を担当した大村雅朗はともにプリンスが好きだったためか、Linn Drum(リンドラム)を使用したプリンス風の音作りをしています。

それほど趣味が合っていたものの、当時の2人は犬猿の仲だったとか。

ニュアンスしましょ/香坂みゆき

1984年秋の資生堂フェアネスキャンペーンソング。

同年春のキャンペーンに続きEPOが提供、より「和」の匂いが強い楽曲に仕上がっています。

凝ったリズムが違和感なく聴けるのは香坂みゆきのタイム感のよさゆえか。

メトロポリスの片隅で/松任谷由実

1985年秋の資生堂フェアネスキャンペーンソング。

クールな世界観と印象的なサビの歌メロがユーミンならでは。

色・ホワイトブレンド/中山美穂

1986年春の資生堂インテグレートキャンペーンソング。

竹内まりやの提供曲で、レコーディングには作者みずから立ち会い、英語の発音の指導をしたというエピソードがあります。

その竹内まりやも旧知の仲の安部恭弘とともにコーラスで参加。杉真理周辺のビートルズ的なニュアンスがコーラスから感じられます。

なお、セルフカバーは山下達郎によるビーチボーイズ+ドゥーワップの色が濃厚です。

今まで歌手とモデルは別の人でしたが、ここから歌手本人がモデルを務めるパターンが出てきました。

くちびるスウィング/小林明子

1987年春資生堂インテグレートキャンペーンソング。

ドラマ「キンツマ(金曜日の妻たちへ)」の主題歌「恋におちて -Fall in love-」でデビューしたアルトボイスが売りのシンガー・ソングライターによるライトなスイング・ポップ。

この頃のシティポップは、こうしたスイングビートの楽曲がアルバムに一曲くらい入っていました。

2010年以降のシティポップでこの流れを受け継いでいるのは、星野みちるの「流れ星ランデブー」などごくわずかです。

椿姫の夏/早瀬優香子

1987年夏の資生堂フェアウインドキャンペーンソング。

細野晴臣が提供、渋谷系にも影響を与えたことで知られる歌手兼女優の舌っ足らずなウィスパーボイスが唯一無二の魅力を放っています。

楽曲と歌に漂うアンニュイさがたまりません。

彼女とTIP ON DUO/今井美樹

1988年春・秋の資生堂チップオンデュオキャンペーンソング。

私が今井美樹の存在を知ったのはこの楽曲がきっかけ。

とんでもなく心地のいい「微笑声」に一聴してハマったものです。

「今井のチョイス やたっ!」「技あり!美樹のアイシャドウ」のセリフもいまだによく憶えています。

世間的にもこの楽曲から今井美樹の認知度はグングン上昇。以降の快進撃は周知のとおりです。

今井美樹に多数のヒット曲を書いた上田知華による最初の提供曲としても知られています。

モータウンビートにエレガントな色をつけた佐藤準の編曲も見事。

1990年代以降の資生堂CMソング

90年代以降になると資生堂のシティ・ポップ路線からクラブ・ジャズ路線へと移り変わっていきます。

時代的にもAORやシティ・ポップの人気が下火だったからでしょう。

ところがそれから20年ほど経った2010年代には、牧野由依の「お願いジュンブライト」、土岐麻子の「Gift ~あなたはマドンナ~」でEPOの楽曲が起用され、再び80年代の路線が復活します。

おわりに

今回は1980年代の資生堂キャンペーンのタイアップで作られたCMソングの中から、シティ・ポップのテイストが強い楽曲を厳選して紹介しました。

シティ・ポップ視点で選んだ資生堂CMソングは次の13曲です。

  1. 不思議なピーチパイ
  2. ニートな午後3時
  3. A面で恋をして
  4. 気分はフェアネス
  5. う・ふ・ふ・ふ
  6. くちびるヌード
  7. その気×××(mistake)
  8. ニュアンスしましょ
  9. メトロポリスの片隅で 
  10. 色・ホワイトブレンド
  11. くちびるスウィング
  12. 椿姫の夏
  13. 彼女とTIP ON DUO

2020年代の世界的ブームを反映して、資生堂が今後またシティ・ポップ路線に突き進んでいくことを期待します。

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kinuzure

人生の大半の時間を中古盤DIGについやしてきたポップスマニア。いまだに大人になれていないクリスタルな四十路男。【来歴】1980年代、幼少期にAORと歌謡曲を聴いて育つ。 海外のAORを数多く聴いていたものの、あるとき「AOR歌謡」を発見。強く惹かれる。【好物】レコード/古本/1980年代/生クリーム/コーヒー/ウィスパーボイス/ディミニッシュコードの響き

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