AOR歌謡レビュー

五味美保「Miss Honey」はハニーボイスが魅力的なアルバム!【シティポップ名盤】

ミスハニー

今回は五味Chanこと五味美保の2ndアルバム「Miss Honey」を紹介します。

シティポップ・ファンから一定の支持があるものの忘れられがちな作品で、今後もっと評価されるべき一枚です。

五味美保「Miss Honey」の聴きどころ

「Miss Honey」は1990年4月25日に発売した五味美保の2ndアルバムです。

デビュー作「MIND HOLIDAY」からおよそ一年後の作品ながら、前作よりボーカルのキラキラ感がアップ。

とくに先行シングル「恋のタイミング」は、シティポップの隠れ名曲の一つと呼べるほどのクオリティーに仕上がっています。

本盤の聴きどころは次の3つ。

  • 高音を強化したハニーボイス
  • 通好みのバックミュージシャン
  • 歌謡曲を踏まえたソングライティング

ひとつずつ説明しましょう。

高音を強化したハニーボイス

前作「MIND HOLIDAY」での五味美保は、もう少し低いトーンで歌っています。

確かに歌はうまいものの、同年デビューの丸山みゆきと似た路線で、突出した何かがまだない印象でした。

ところが本盤からは地声の高音を武器にしたボーカルに変化。キラキラ感がアップし、スイート&ポップな「ハニーボイス」を聴かせてくれます。

通好みのバックミュージシャン

本盤のバックを務めたミュージシャンは、青山純、松原正樹といったシティポップ作品によくクレジットされてる有名どころではありません。

とはいえ、シティポップのマニアなら高い関心を示すような顔ぶれが集まっています。

  • ドラム 山本雄一
  • ギター 稲葉ナルヒ
  • サックス 竹上良成

これを見て「おおっ!」と思ったならかなりの通でしょう。

いずれも一流ではあるけれど2番手感のある人たちだからです。

歌謡曲を踏まえたソングライティング

ジャケットやブックレットを見る限り、ポップ路線を突き進むと思われる本盤。

しかしながら、五味美保みずから書いた楽曲はほのかに歌謡曲の匂いがします。

本人のセンスなのか、制作サイドの狙いだったのかはわかりません。

ポップなイメージのなかに哀愁の影が落ちている。

80年代から90年代へ移り変わる時期ならではのシティポップとAOR歌謡のブレンドが味わえます。

五味美保「Miss Honey」のオススメ曲

本盤のオススメ曲を紹介しましょう。

【1 Dear...~心に吹く微風~】

やわらかい高音にさわやかなブリーズを感じるオープニング曲。

Aメロがカーティス・メイフィールドの「Tripping Out」のリズムなのも、シティポップ的にはポイントが高いです。

【2 中途半端なハートブレイク】

モータウンビートの変奏的なリズムに筒美京平風の歌メロ。

思わず早見優かと間違えそうになります。

歌謡曲も踏まえた曲を書いたところ、ソングライターとして目指す方向がはっきりしています。

【4 恋のタイミング】

アルバムのハイライトにしてシティポップの傑作。

楽曲、アレンジ、ボーカルのすべてが大成功。すばらしいグルーヴを奏でています。

コーラスの「ダウンタウンボ~イ、アップタウンガ~ル、アイラビュゥゥ~」が耳に残ります。

【5 Daydream】

木陰から見た夏の海の白昼夢。にしては秋風ムードの曲調。

それならもう少し哀愁に振れてもよかったような。

【9 Darlin'】

同時期の谷村有美のようなガールポップ黎明期的一曲。

ただ、歌メロに入ったとたんマイナーに転じ、哀愁感が出ます。

サビでイントロの音につながりますが、着地は原色でなくセピア色。

単純に「明るい・暗い」で語れない林哲司マナーが適用されているようにも思えます。

1 Dear…~心に吹く微風~
2 中途半端なハートブレイク
3 BROKEN NIGHT
4 恋のタイミング
5 DAYDREAM
6 BEAT POP KIDS
7 KISS ON HEART
8 BOY FRIEND
9 DARLIN’
10 君が抱く僕の想い出は君の中

全作詩:五味美保・池永康記
全作曲:五味美保・杉村雅祥
全編曲:内藤慎也

五味美保のプロフィール

五味美保は1969年9月16日埼玉県生まれ。

高校2年生の夏に杉村雅祥と出会ったことがきっかけで、1989年に歌手デビュー。

1990年に発表した本盤「Miss Honey」からシンガー・ソングライター路線へ転向しました。

ラジオDJとしても活動。1992年からは「五味千賀庫」の名前で声優やアイドルに楽曲提供をしています。

1994年、同レコード会社に所属していたLaLaとユニット「moon」を結成。アン・ヴォーグ的な音づくりを意識した楽曲を発表しています。

2005年、「愛・地球博」でプラネタリウム「手塚治虫のCOSMO ZONE THEATER」のテーマソング「ガラスの地球」を発表。以降の活動は途絶えています。

おわりに

今回は五味美保の2ndアルバム「Miss Honey」を紹介しました。

本盤の聴きどころは次の3つ。

  • 高音を強化したハニーボイス
  • 通好みのバックミュージシャン
  • 歌謡曲を踏まえたソングライティング

【五味美保「Miss Honey」の総評】
※星5つで満点

時代性 ★★★
演奏  ★★★
独創性 ★★
楽曲  ★★★★
歌   ★★★★

現在、CDは廃盤、音楽配信サービスでの配信もありません。

気になったら中古盤を探しましょう。

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kinuzure

人生の大半の時間を中古盤DIGについやしてきたポップスマニア。いまだに大人になれていないクリスタルな四十路男。【来歴】1980年代、幼少期にAORと歌謡曲を聴いて育つ。 海外のAORを数多く聴いていたものの、あるとき「AOR歌謡」を発見。強く惹かれる。【好物】レコード/古本/1980年代/生クリーム/コーヒー/ウィスパーボイス/ディミニッシュコードの響き

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