インドネシアのYouTuber・Rainych(レイニッチ)によるカバー、韓国のDJ・Night Tempo(ナイトテンポ)による公式リエディットのリリースなどで、世界的に知られることとなった松原みきの代表曲「真夜中のドア~Stay With Me」。
今回は「松原みきに興味を持ったけどまだ詳しく知らない」「他のおすすめ曲は?」という思いを抱いた人が次に聴くべき楽曲を、シティポップ/AOR歌謡マニアが厳選してお届けします。
松原みきのシティポップ名曲はコレ!
松原みきが1979年のデビュー以来発表したアルバムは10枚、シングルは16枚(「スージー松原」名義の「ガンモ・ドキッ!」を含めると17枚)。
このなかからシティポップ視点で選ぶと、オススメは次の19曲です。
- Cryin'
- 愛はエネルギー
- スーヴェニール
- SEE-SAW LOVE
- カランドリエ
- バレリーナ
- Bay City Romance
- DREAM IN THE SCREEN
- 微熱が平熱
- 10cmヒール
- -CUPID-
- シャンデリア・ミラージュ
- Change
- 雨のちハレルヤ
- もう一度Fall in Love
- 12月のパリ
- サングラスはもういらない
- IN THE ROOM
- ハートの鍵貸します
詳しく紹介していきましょう。
松原みきのシティポップ名曲19選
それでは今回セレクトした19曲の詳細を見ていきます。
Cryin'
まずは「真夜中のドア」収録のアルバム「POCKET PARK」から、ビターテイストなファンク色の強い楽曲を。
大橋純子のバックバンド「美乃家セントラル・ステイション」の土屋潔によるギターカッティングからスタート。
ところがそのままビターに終わらず中盤で甘くメロウに展開するのがシティポップらしいテイストになっています。
愛はエネルギー
デニース・ウィリアムスの「I FOUND LOVE」をモティーフに作られたポップな1曲。
作編曲を手掛けたのは「真夜中のドア」の作者・林哲司。
メロウなグルーブと包み込むようなおおらかな松原みきのボーカルが素晴らしい。
この時期の林哲司は「I FOUND LOVE」が相当気に入っていたのか、竹内まりやの「September」のアレンジも「I FOUND LOVE」テイストです。
スーヴェニール
3rdアルバム「-CUPID-」から、失恋を憂いあふれる声で歌った楽曲。作曲は佐野元春。
サビのため息のような「フ~」の表情豊かさに、松原みきの表現力の高さが感じ取れます。
SEE-SAW LOVE
3rdアルバム「―Cupid―」でバックの演奏を務めたアメリカのファンク/フュージョンバンド「Dr.STRUT」がアレンジでも参加した4thアルバム「Myself」から。
80年代のブギー(ディスコ)好きにおすすめの一曲。
全体的にはクールなボーカルながら、ところどころウキウキ感をのぞかせます。こういう表現も松原みきならでは。
カランドリエ
4thアルバム「Myself」から。スイングする16ビートで風景をながめるように淡々と歌う爽快な楽曲。
作曲は芳野藤丸。
バレリーナ
同じくアルバム「My self」から。
作曲が松任谷正隆ということもあって、手堅い仕上がり。
「Dr.STRUT」のホーンアレンジがエルボウボーンズ&ラケッティアーズの「ナイト・イン・ニューヨーク」を感じさせますが、実はそれより1年早く作られています。
この曲あたりから松原みきの歌にもともとあったリズムのハネ感がさらに強化されていきます。
Bay City Romance
5thアルバム「彩」から。凝ったリズムとブラック・ミュージック風のメロウなコーラスが秀逸な楽曲。
松原みきのボーカルはだいぶ抑制が効いています。
アレンジは佐藤準。間奏のドラミング(クレジットから判断するとおそらく青山純)も聴きどころです。
DREAM IN THE SCREEN
とんでもなく色気のあるボーカル。
ハスキーな低音と伸びやかな高音が活かされたこの楽曲は、松原みき本人が作曲を手掛けています。
大村雅朗による「ちょうどいい加減」にサンバのリズムを取り入れたアレンジも秀逸。
手が届かない相手への想いを表した歌はあまりに魅力的で何度聴いても新鮮です。
微熱が平熱
ドゥービー・ブラザーズの「What a Fool Believes」のリズムを下敷きにしたと思われる楽曲。
このリズムを用いたアレンジはシティ・ポップに多く見られます。
微笑みが見えるような弾む歌声が聴きどころ。
10cmヒール
5thアルバム「彩」から、ハネるスイングビートが気持ちいい楽曲。
作詞作曲ともに松原みき本人。この頃から歌のみならず、シンガー・ソングライターとしての才能も発揮していきます。
-CUPID-
イントロの数原晋による優雅なトランペットからファンキーなグルーヴへと展開する作曲:伊藤銀次、アレンジ:大村雅朗の名曲。
ブルーノートスケールとハスキーな低音の相性がバッチリで、松原みきの歌声の魅力が存分に味わえる楽曲のひとつです。
シャンデリア・ミラージュ
6thアルバム「REVUE」から、伊藤銀次による提供曲を。
久々にアレンジを林哲司が担当。オメガトライブ的な清涼感のあるコーラスにこの時期の林哲司らしさが表れています。
ただ、間奏のピアノがシャカタク風なのは松原みきの特性を考慮したように思われます。
Change
5thアルバム「彩」のオープニングを飾るポップな一曲。
亀井登志夫作曲のクールなサビの転調に、ウィスパーボイスを当ててくる松原みきのセンスが堪能できます。
雨のちハレルヤ
6thアルバム「REVUE」に収録された松原みきの傑作のひとつ。個人的にはもっともおすすめしたい楽曲です。
- ハスキーボイス
- 歌声の微妙な表情の変化
- 軽快なリズム感
といった松原みきの魅力のすべてが詰まっています。
とくに、サビの「ハ~ロ~」が一回ごとにニュアンスを変えるのがすばらしい。
レイパーカーJr.の「Woman Needs Love」風アレンジは林哲司。
もう一度Fall in Love
同じく6thアルバム「REVUE」から、これまた林哲司のアレンジによる1stアルバム「POCKET PARK」のメロウな路線を継承した楽曲。
スローテンポのグルーヴにしっとりした歌声が心地いい。
12月のパリ
カシオペアのメンバーがバックアップを務めた8thアルバム(カバーアルバム「BLUE EYES」をカウントすると9th)「LADY BOUNCE」から。
イントロから歌モノらしくない各楽器の主張が強すぎるアレンジに対抗してか、松原みきのボーカルもいつもより力が強めです。
サングラスはもういらない
同じく8thアルバム「LADY BOUNCE」から。
新機軸を打ち出そうとしたのか、今までとちがって全体的に高いトーンで歌っています。
IN THE ROOM
オリジナルとしては事実上のラストアルバムとなる「WiNK」から。
すっかり肩の力が抜けてリラックスした歌を披露しています。ジャケットの表情も今までにまして穏やか。
作曲はおなじみの林哲司ですが、アレンジが鷺巣詩郎。珍しい取り合わせです。
ハートの鍵貸します
作曲:村田和人による松原みきの歌声の伸びやかさを引き出した楽曲。
「魔法のドアを/ゆっくり開けて」と歌っていて、最後の作品でも「ドア」が出てくるのが感慨深いです。
おわりに
今回は、「真夜中のドア~Stay With Me」に興味を持った人が次に聴くべき松原みきのシティポップを19曲厳選して紹介しました。
松原みきは、ハスキーかつ変化に富んだ歌声と軽快なリズム感が魅力的な歌手です。
そうした魅力をサポートしていたのが一流のミュージシャンや作家陣。いずれの楽曲を聴いてもそのことがうかがえます。
これらを足がかりに、ぜひ松原みきの新たなドアを叩いてください。