1980年代後半あたりから、UKのグループ「ブロウ・モンキーズ」の楽曲をモティーフにしたポップスがAOR歌謡/シティ・ポップ界隈でいくつも作られました。
ここではそうした楽曲を「ブロウ・モンキーズ歌謡」として、随時紹介していきます。
※数が多いので少しずつ追加
ブロウ・モンキーズ歌謡まとめ
さっそく「ブロウ・モンキーズ歌謡」を紹介していきましょう。
米米CLUB「Troubled Fish」
まずは最も有名な米米CLUB「Troubled Fish」から。
「Digging Your Scene」の明確なオマージュ・ソングです。
グルーヴやブルーノートなど、原曲にあるブラック・ミュージックの要素を換骨奪胎。
そもそも、原曲がマーヴィン・ゲイの「What's Going On」をベースにしているというポイントもおさえています。
米米CLUBがいかに音楽的に真摯なバンドだったかを示す一曲。
少年隊「ミッドナイト・ロンリー・ビーチサイド・バンド」
作詞:康珍化/作曲:筒美京平による少年隊6枚目のシングル「君だけに」のカップリング曲。
「Digging Your Scene」と「It Doesn't Have To Be This Way」を加味したアレンジが施されています。
原曲以上にメロウに仕上げる手腕はさすが筒美京平。
平山みき「冗談じゃない朝」
1987年リリースした作詞:秋元康/作曲:筒美京平による平山みきのヒット曲。
田村正和・石原真理子主演のテレビドラマ「熱くなるまで待って!」の主題歌でした。
モティーフは「It Doesn't Have To Be This Way」。
要所要所にはさまれるブルーノート・スケールの苦みが見事。
錦織一清「Song for You」
イントロのサックスのフレーズが「ミッドナイト・ロンリー・ビーチサイド・バンド」を経由した「Digging Your Scene」の引用。
西寺郷太による少年隊リスペクトがにじみ出る楽曲です。
もはやブロウ・モンキーズというより、少年隊オマージュソング。
伊藤智恵理「魔法をかけて」
1987年に歌手デビューしたアイドルの1st「HELLO」収録曲。
「It Doesn't Have To Be This Way」がモティーフで、イントロはそのまんまと思えて原曲にないモンゴメリー奏法のギターが加えられています。
なお、伊藤智恵理にはスタイル・カウンシルの「Shout To The Top」を模した楽曲もあり、プレ渋谷系を感じさせます。
星野みちる「週一ロマンス」
AKB 48元メンバーにしてシンガー・ソングライターの星野みちるが2017年に発表したアルバム「黄道十二宮」から、2010年代のブロウ・モンキーズ歌謡としては最高峰の「週一ロマンス」を。
曲調は竹内まりや的なシティ・ポップをイメージさせながら、イントロで「It Doesn't Have To Be This Way」が明確に引用されています。
作曲は元nice music、microstarの佐藤清喜。
松本伊代「土曜日のparty」
松本伊代の1989年のアルバム「プライベート ファイル」から。
KANによる提供曲ですが、編曲を担当した新川博が「It Doesn't Have To Be This Way」のエッセンスを加えたと見えます。
中原めいこ「Infinite Love(無限の愛)」
中原めいこの1988年のアルバム「鏡の中のアクトレス」から。
イントロのギターカッティングが「It Doesn't Have To Be This Way」のニュアンス。
Cornelius「Silent Snow Stream」
「Digging Your Scene」のコード進行を引用。
原曲のグルーヴなど必要な情報を削ぎ落として平面的にするという渋谷系らしい引用法です。
そもそも「ブロウ・モンキーズ」って何?
ブロウ・モンキーズのことにも触れておきましょう。
ブロウ・モンキーズは、ブラック・ミュージックのレコードコレクターでカーティス・メイフィールドをリスペクトするDr.ロバートを中心にUKで結成されたバンドです。
1984年にデビュー、80年代中盤以降にヒットを連発しました。
ブルー・アイド・ソウルのバンドながら、ハウス・ミュージックやワールド・ミュージックといったクラブ・シーンを意識した音作りが特徴。
メロウな楽曲に社会風刺的な歌詞を乗せたため、スタイル・カウンシルと比較されることもしばしば。
1986年のヒット曲「Digging Your Scene」も、当時ロンドンで猛威をふるったHIVウイルス/AIDSによって同性愛者への差別、偏見が起こったことへの抗議を示した楽曲でした。
アシッド・ジャズなどクラブ・ミュージックにも影響を与えています。
おわりに
「ブロウ・モンキーズ歌謡」はまだ他にもあります。
随時追加していくのでお楽しみに。