「地球防衛少女イコちゃん2 ルンナの秘密」でイコちゃん役を演じて以降、80年代の終わりから90年代の初めまで歌手として活躍した増田未亜。
今回はそんな増田未亜が、1989年からおよそ約3年の間に発表した曲をまとめたベストアルバム「HOT SWEET MEMORY」(1992年)を紹介します。
増田未亜「HOT SWEET MEMORY」は天然のウィスパーボイスが味わい尽くせる一枚
本盤は1989年4月~1992年3月までに増田未亜が発表した楽曲からセレクトしたベストアルバム。
増田未亜の特徴だった天然のウィスパーボイスの魅力が、ぎっしり詰まった作品になっています。
本盤では様々な表情のウィスパーボイスが聴けます。
このアルバム以降、増田未亜は歌手活動から遠ざかりますが、この時期が歌手としてピークでした。
とくに1曲目の「心のBirthday」はふんわりしたファニーなウィスパーボイスが魅力的な秀作です。
増田未亜「HOT SWEET MEMORY」のオススメ曲
増田未亜「HOT SWEET MEMORY」のオススメ曲を紹介しましょう。
心のBirthday
随所でコードがよく動くミディアムテンポの曲調にフワッとしたウィスパーボイスが見事にハマっています。
後半に重ねた本人の掛け合いコーラスも成功。
立体的なシンセの音で奥行きを演出したことで、歌声もキラキラした光を放っています。
バブル崩壊後にはこうした「自分を励まそうソング」が流行りました。
電撃的ロマンス
90年代アイドル歌謡の隠れ名曲。
グルーヴ、歌メロ、つなぎの「ウキウキ」「スキスキ」「ドキドキ」の掛け声など、何度聴いても飽きない工夫が凝らされています。
リズムが打ち込みなのにハンドクラップだけ生音なのもライブ感が出ていてGood。
90年代初頭に起きた70年代歌謡曲リバイバルを受けて、印象的なリフをイントロに入れているのもおもしろい。
シンセの音のバランスなど、90年代ならではの音になっています。
夏の瞳 DOKI・DOKI
イントロの入り方が複雑。
ユーロビートに70年代後半のディスコをかけ合わせたアレンジは鷺巣詩郎によるもの。
「元気いっぱい感」を出して歌うのが正解のこうした曲も、増田未亜はあくまで囁くように淡々と歌います。
冬のウインド
「冬」なのになぜか間奏でラテンフレーバーが加わる謎のアレンジが施された楽曲。
最小限のコードの動きだけで成立させた職人技で作られています。
ただ、このくらいBPMが速いとウィスパーボイスがうまく対応できていないのが気がかり。
一秒のパラダイス
AOR歌謡的に一推し曲。
セピア色の哀愁マイナーコードの上をふんわりしたウィスパーボイスで歌メロの輪郭をつけていきます。
小声でふわふわした歌ながらもピッチはぶれていません。
ティンカーベルは待ちきれない
ビタースイートチョコ的バレンタイン・ソング。
ゲートリバーブのドラムのダイナミックな響きにスキップするようなウィスパーボイスのボーカルも絶好調です。
増田未亜の声はこのくらいのテンポの曲によく合います。作曲は上田知華。
ハピネス物語
コード進行とコーラスにビートリーな世界観を感じるアレンジは、さすがの京田誠一ワーク。
コーラスには京田誠一の師匠・杉真理が入っているか(クレジットなし)。
作曲は大塚修司。技巧的でなくむしろ舌足らずな歌が調和、中盤からのシンセストリングスの動きも気分を盛り上げます。
瞳を閉じて
ウィスパーボイスの柔らかさが活かされた静かな楽曲。
しっとりムードでサビ前とサビのコードで哀愁感を出す林哲司的な演出がAOR歌謡的にはポイント高めです。
増田未亜のプロフィール
増田未亜は1972年5月6日生まれ、大阪府出身のアイドル歌手です。
幼少期より俳優を目指し活動、1988年にビデオドラマ「地球防衛少女イコちゃん2 ルンナの秘密」に主演。
翌89年に歌手デビューし、シングル9枚とアルバム4枚を発表しました。
2006年のNHK連続テレビ小説「芋たこなんきん」への出演を最後に、活動は途絶えています。
おわりに
今回は増田未亜のベストアルバム「HOT SWEET MEMORY」(1992年)を紹介しました。
【増田未亜「HOT SWEET MEMORY」の総評】
※星5つで満点
時代性 ★★★
演奏 ★★★
独創性 ★★
楽曲 ★★★
歌 ★★★
本盤はすでに廃盤、音楽配信サービスでの配信もありません。
気になったら中古盤を探しましょう。