シティポップの名盤・裏名盤を紹介する企画でもめったに挙がらない作品を紹介しましょう。
宮永尚美のデビューアルバム「MOMENT」(1984年)です。
宮永尚美ってどんな人?
宮永尚美に高い関心をもっている人はいまや少ないでしょう。
宮永尚美は1984年にデビューしたシンガー。
本盤を発表してから電撃戦隊チェンジマンの「LOVE FOREVER」を歌ったあと、1986年に2ndアルバムを出したきりソロ活動を停止しています。
1987年、児島由美、松葉美穂とともにガールズグループ「Jonettes」を結成するも、その後は表立った活動はなし。
グループでは「SESERA」を名乗っていて、Jonettesのサイトにはロンドン在住でシンガーとして活動しているとの情報もありましたが、2014年でサイトの更新が止まっているため、現在はどうしているかわかりません。
宮永尚美「MOMENT」の聴きどころ
宮永尚美「MOMENT」の聴きどころは次の3つです。
- クールすぎず熱すぎないボーカル
- スラップベースの強烈なグルーヴ
- 松原みき・渋谷祐子の提供曲
ひとつずつ見ていきましょう。
クールすぎず熱すぎないボーカル
宮永尚美のボーカルはクールすぎず熱すぎず、ちょうどいいバランスがとれているのが特徴です。
歌謡曲シンガーはとかく熱唱気味になりがちでした。
一方でシティポップ系シンガーの歌はクールすぎる傾向にあります。
そんななかにあって、宮永尚美は熱唱、クールのどちらにも偏っていません。
バランス感覚のしっかりした歌を聴かせてくれるのです。
スラップベースの強烈なグルーヴ
芳野藤丸のプロデュースしているため、アーバンブラックコンテンポラリー/ブギーを意識したサウンドが本盤の特色です。
とはいえギターよりもスラップベースのバキバキした音の印象が強く、ファンク好きにはたまらない内容になっています。
松原みき・渋谷祐子の提供曲
本盤は、シティポップ・ブーム以来、注目されている松原みき・渋谷祐子の2人が楽曲を提供しています。
この事実だけでも、聴く価値のある作品だといえるでしょう。
宮永尚美「MOMENT」のオススメ曲
宮永尚美の「MOMENT」からオススメ曲を紹介していきます。
ヒートウェイヴ
シャカタクのロジャーとビルによる提供曲。
渡辺直樹のスラップベースと芳野藤丸のギターカッティングが冴えます。
「ヒートウェイヴ」といっても宮永尚美のボーカルは後半のブルーノートを含め、クールすぎず熱すぎない温度感です。
B級感が強すぎるMVもどうぞ。
8月のオブジェ
小坂明子の提供曲。
サビとBメロのマイナーコードの哀愁感にスラップベースが絡みます。
パーティーにふられて
松原みきによる提供曲。
浮遊感たっぷりのミディアムグルーヴから、サビはスイングビートに展開します。
芳野藤丸はギターだけでなくコーラスでも参加。
MOMENT
山本俊彦(ハイ・ファイ・セット)の提供曲。
歌メロが「This Masquerade」のようなニュアンス。
ただ、アンビエント風のアレンジはいまひとつです。
TOKIO WOMAN
山本恭司(BOWWOW)による提供曲。
間奏の芳野藤丸によるボリューム奏法が聴きどころ。
宮永尚美のボーカルは90年代的ハイトーンボイスを先駆けているかのよう。
ときめき〜Heart Beat〜をとめて
作詞:宮原芽映/作曲:渋谷祐子による曲で、アルバム中、もっともキャッチーなナンバー。
マイナーなAメロからスタートしたかと思うとサビがポップに展開するあたり、さすがは「POP LADY」の仕事です。
はるかなフォトグラフ
松原みき提供によるバラード。
曲は悪くないのに、アレンジがシンプルすぎてせっかくのジョーグループのストリングスが活かしきれていないのが残念です。
おわりに
今回は宮永尚美のデビューアルバム「MOMENT」を紹介しました。
【宮永尚美「MOMENT」の総評】
※星5つで満点
時代性 ★★
演奏 ★★★
独創性 ★★
楽曲 ★★
歌 ★★★
本盤はすでに廃盤、音楽配信サービスでの配信もありません。
気になったら中古盤を探しましょう。