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気分はトロピカル!和モノ・ファンカラティーナ37選|ポップスマニアがセレクト

ファンカラティーナ和モノ

1970年代後半から80年代初頭にかけてイギリスを中心に流行した「ファンカラティーナ」は、日本のポップスにも大きな影響を与えました。

今回は、「和モノ・ファンカラティーナ」と思われる音楽を37曲ピックアップしてお届けします。

これさえ読めば日本版ファンカラティーナの全貌がつかめるはずです。

ファンカラティーナの特徴

ファンカラティーナとは、「ラテン風のポップス」に「ファンクの要素」をかけ合わせた音楽です。

1970年代後半から80年代初頭にかけて、イギリスを中心に流行しました。

本格的なラテン音楽というよりは、「ラテン風ポップス」がベースなのがポイントです。

代表的なグループは「モダン・ロマンス」「アニマル・ナイトライフ」「ブルー・ロンド・ア・ラ・ターク」など。

有名どころではカルチャー・クラブの「White Boy」、デュランデュランの「The Reflex」、ベルスターズの「Cia Ya Ya」あたりもファンカラティーナとして聴けます。

本格的なラテン音楽に比べるとやや軽く、過剰に賑やかな印象を受けるはずです。

こうした「軽さ」「過剰な賑やかさ」を意識して、これから紹介する和モノ・ファンカラティーナを聴いてみましょう。

和モノ・ファンカラティーナ37選

それではさっそく和モノ・ファンカラティーナを紹介していきます。

ロートスの果実 -夢楽樹/中原めいこ

まずは和モノ・ファンカラティーナの代表作ともいうべき中原めいこ4枚目のアルバムから。

同作ではカネボウのキャンペーンソング「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」が有名ですが、よりトロピカルなムードが出ているのは2曲目の「ロートスの果実 -夢楽樹」です。

単に陽気なだけでなく、マイナーコードで「陰り」を出しているのも聴きどころ。

こうした「陰り」は、和モノ・ファンカラティーナ独特のテイストです。

中原めいこには、ほかにも「今夜だけDance・Dance・Dance」など和モノ・ファンカラティーナとして必聴の曲があります。

CRESCENT PIERCE/小林泉美

一般的には、アニメ「うる星やつら」のオープニングテーマ「Dancing Star」として知られた曲。

アニメ版よりラテンのリズムが強調され、完璧なファンカラティーナに仕上がっています。

作詞がシティ・ポップ界隈で存在感を示したシンガー・ソングライターの宮原芽映なのも見逃せない。

ときめきトゥナイト/加茂晴美

作曲:古田喜昭・編曲:大村雅朗のコンビで制作された同名アニメの主題歌にして和モノ・ファンカラティーナを代表する作品。

才気あふれる2人のセンスが溶け合って、オリジナリティの高いポップソングに仕上がっています。

夜はカクテル/S-KEN

完璧にファンカラティーナを狙って作られた曲。

イギリスのバンド「バウ・ワウ・ワウ」に通ずる居心地の悪い音の動き方がニューウェーヴしています。

灼熱魔術団/榊原郁恵

すぎやまこういち作曲の上質な和モノ・ファンカラティーナ。

「チャチャチャ」を聴きたくて何度でもリピート再生してしまう中毒性高めな曲です。

まんぼでGANBO!/Tu-Tu パンツの穴シスターズ

1987年発表、月刊「BOMB!」の読者投稿コーナーから生まれたビデオアニメ「パンツの穴」のテーマ曲。

鈴木あい、林きみえ、真砂のり子の3人からなるグループですが、「パンツの穴」がこれ以降シリーズ継続しなかったため、一回きりの企画となりました。

Bメロの起伏がやりすぎなものの、80年代の日本産ポップスらしい独自性が出ています。

あの娘I・N・G/M-BAND

ネオロカバンドによるバリバリ・ブッチギリの和モノ・ファンカラティーナ。

ダンスも含めて、明確にイギリスのシーンを意識していたのがわかります。

歌メロが「コパカバーナ」風なのもトロピカルを狙ったものでしょう。

天気予報を聞いてごらん/松本ちえこ

1978年発表の松本ちえこ5枚目のアルバム「感覚都市」から。

大村雅朗、船山基紀、矢野立美、若草恵と編曲家を4人も起用し、アルバム全体が「シティ・ポップ前夜のウエストコースト歌謡」といった音に仕上がっています。

この「天気予報を聞いてごらん」は、もう少しで松田聖子の製作陣につく三浦徳子が作詞、大村雅朗が編曲を務めました。

三浦徳子にとっては「南太平洋~サンバの香り」「お嫁サンバ」へと続く「サンバもの」の先駆けとなる曲でもあります。

フルーツ・パフェ ONE NOTE SAMBA/小林泉美 & Flying Mimi Band

ライトなファンカラティーナのスタイルにアレンジされたワン・ノート・サンバ。

歌詞の甘さに反して演奏はビターテイストです。

世界を売った女神達/JAGATARA

ニューウェーヴ勢のなかでEP-4らと並んでファンク色が強かった「JAGATARA」。

何かとボーカル・江戸アケミの破天荒な生き様が取りざたされがちですが、最高峰のアフロビート・バンドだったことを忘れてはいけません。今振り返ると、イギリスの「ヘアカット100」と同ポジションにも思えます。

「世界を売った女神達」。私はこの曲を「バースデイ誕生日」と覚えていました。

本格的なラテンをやると見せかけて、ラップが入り歌謡曲調になるというごった煮感がなんともモンド。

パパはマンボがお好き/大空はるみ

ペリー・コモのファンカラティーナ・カバー。

大空はるみのファニーボイスにはトロピカルジュースがよく似合う。

SU・TE・KI/麻倉未稀

麻倉未稀といえばカバーソングのヒットで知られていますが、実はブラジル音楽も得意。

ボサノバ・テイストな曲が大半を占めるアルバムも何作か残しているほどです。

エモーショナルなイメージと裏腹に、端正な歌い込みもお手のもの。この曲も、ファンカラティーナの陽気なバックトラックに乗せて緻密にコントロールされた歌を聴かせてくれます。

サテンサンバ72/早見優

早見優の1stアルバムから、湿度少なめトロピカルな佳曲。

作曲:和泉常寛・編曲:馬飼野康二のコンビらしく、音のボキャブラリーは高めです。

太陽がいっぱい/松本伊代

この頃のラテン歌謡だとのっぺりしたベースを入れるのが通例。が、あえてファンキーなベースラインを選択するところ、編曲家・鷺巣詩郎らしい仕事っぷりです。

作曲は鷺巣詩郎と親しい羽佐間健二(杉真理が命名した川原伸司の変名。ビートルズの「エリナ・リグビー」に出てくる「ファザー・マッケンジー」に由来)。

そのせいか、鷺巣詩郎がのびのびとアイディアを出して楽しんでいる雰囲気が伝わってきます。

光の中で振り向くわたし/石野真子

歌メロの哀愁が強めのラテン歌謡。

全体に湿度があり、パーカッションやリズムを刻むギター・カッティングだけが乾いているところが、和モノ・ファンカラティーナならではの味わいです。

秘密のガーデン/酒井法子

南佳孝が提供しただけあって、ほどよく緩急がついたポップな曲。

スタートからラテン・パーカッションが鳴りまくり、最後までその勢いのままに走り抜けます。

虹のマジック/渡辺満里奈

1987年発表の渡辺満里奈の2ndアルバム「EVERGREEN」から。

打ち込みのアゴゴベルの音が曲のグルーヴの要となる編曲は山川恵津子によるもの。

同作の「恋の日付変更線」も同じパーカッションのリズムが使われています。

星空のディスコティック/浅香唯

イントロからゴキゲンな「パーティー抜け駆けソング」。

Bメロのディミニッシュコードがドリーミーにスターライト感を演出します。

ココナッツ・ドリーム/小泉今日子

筒美京平によるトロピカルリゾート・ソング。

強めのしゃくりに個性が出ています。

筒美京平の提供曲では、1986年のアルバム「今日子の清く楽しく美しく」に収録された「U・BU」も打ち込みではあるものの、同様の路線でした。

パッセージ/工藤静香

作曲:後藤次利のほどよく哀愁味を帯びた曲。

ラテン風のリフや、サビの過剰なほどのハンドクラップがファンカラティーナの匂いを醸し出しています。

口唇緊張あと5cm/森尾由美

ラテン要素が入ったアイドル歌謡のなかでも、サビにかけてのパーカッションの乱打が強烈な曲。

これも和モノ・ファンカラティーナと捉えていいでしょう。

森尾由美は、2ndアルバム「Yumic World」(1983年)収録の「P-夏」もサルサ調でファンカラティーナ寄りです。

8番目のパートナー/森川美穂

森川美穂の2ndアルバム「おんなになあれ」から、小林信吾の編曲によるファンカラティーナ歌謡。

適度にリバーブのかかった音で熱気が表現されています。

蜂蜜池のミステリ-/笠原弘子

声優・歌手として活躍する笠原弘子の1stアルバム「スローガラスの輝き」から。

編曲は山川恵津子。ドラムに青山純、ギターに今剛、ベースに高水健司と、盤石な演奏も聴きものです。

後半のアラーム音のようなシンセのアレンジも斬新。

1990年代に洗練度を高めた笠原弘子の歌もこの時点では初々しい。

月夜の晩には/南佳孝

ティンパンアレイの面々でバックを固めた南佳孝の2ndアルバム「忘れられた夏」から。

浜口茂外也のパーカッションさばきが圧巻です。

避暑地の出来事/荒井由実

ユーミン4枚目のアルバム「14番目の月」から、細野晴臣のスティールパンが印象的な曲。

カリプソをやりたかったのが、演奏技術の過剰さによってにぎやかさが引き出され、ファンカラティーナの味が出ています。

走れラビット/鈴木茂

これもまたティンパンアレイがサルサを演るとただのラテンにはならない例。

展開部ではさまれるウインドチャイムの音が琴の音に近いニュアンスで、和モノ・ファンカラティーナならではの趣が感じられます。

くすりをたくさん/大貫妙子

ラテンパーカッションが鳴っているのにサンバでもボッサでもない。となればファンカラティーナとしかいいようがないのです。

もっとも大貫妙子本人は、「ジョン・トロペイのイメージ」で作ったとコメントしています(ミュージック・ステディ1983年10月号)。

パイナップル・ベイビー/HOLD UP

細野晴臣がスティールパンの演奏と編曲で、大瀧詠一がコーラスで参加したことからポップス通の評価が高いHOLD UPの78年のアルバム「島まで10マイル」。そのオープニングを飾る「パイナップル・ベイビー」をご紹介しましょう。

ティンパン・アレイ周辺のトロピカルなムードがここでも聴けます。

クリスタル・ハネムーン/桑江知子

桑江知子の代表曲のひとつで、作曲は佐藤健。

ラテン歌謡ディスコともとれますが、Aメロでリズム変するあたりがストレンジ。

そのおかしさをもって和モノ・ファンカラティーナとしてもいいでしょう。

皆殺しのハレルヤ/庄野真代

ブルース歌謡風の曲調にファンカラティーナのスタイルをぶつけた佐藤準の編曲が見事です。

阿久悠・上村一夫的な情念うず巻く歌詞は庄野真代本人によるもの。

フラメンコもラテンに含まれますが、そう考えてカルメンのようなイメージでラテン・アレンジにしたのでしょうか。

ハレーション/松原みき

イントロからマンボ的なブラス、そこからマイナーコードにパーカッションが加わるアンニュイなムードを醸し出します。

サヴァンナ・バンドの匂いもほのかに感じられる和モノ・ファンカラティーナの佳曲。

個室/中原理恵

ラテンディスコ歌謡のようで、パーカッションの熱気がファンカラティーナしています。

カラッとしたリズムに反して、湿度を含んだドラムの音も聴きどころ。

マヤマヤビーチ/金井夕子

尾崎亜美の作品を鈴木茂が編曲。

楽曲自体がメロディアスなスロウ・サンバで、フュージョン色も盛り込まれていますが、パーカッションのにぎやかさはファンカラティーナ・テイストでしょう。

星のカリプソ/小森田実

SMAPの「SHAKE」や「らいおんハート」の楽曲提供で名を馳せたシンガー・ソングライター・小森田実の2ndアルバム「MAHAINA CHOO CHOO」から。

リズムにキッド・クレオール&ザ・ココナッツのニュアンスを感じます。

ハッピー2・ダンス/YASU

アニメ「クッキングパパ」のオープニングテーマ。

1990年代以降、衰退の一途をたどるファンカラティーナもアニソン界隈で生き残っていました。

アニマルサマーの夏が来る!/NEOちゃっきり娘

「平成のおニャン子クラブ」を目指して結成されたアイドルグループ「チェキッ娘」。その中から3人のメンバーを集めて「NEOちゃっきり娘」名義で発表した曲です。作曲は中原めいこ。

途中からコードがメジャーセブンに行くメロウな展開へ。そこから空気を変えるように転調に持っていくという、通常のラテン歌謡ではあまりないパターンに、中原めいこの作曲家としての非凡さがいかんなく発揮されています。

ただ、打ち込みの音がTR-909だと違うジャンル(ニュージャックスウィング/ハウス)に聴こえるのが残念。

Storm in lover/絢瀬絵里(CV.南條愛乃)、園田海未(CV.三森すずこ)

2000年代以降はパタリと途絶えていたファンカラティーナの流れを唯一受け継ぐのがこの曲。

ラテン歌謡感抜群の歌メロ、「重さ」を排除したバックトラックは80年代に直結しています。

おわりに

今回は「和モノ・ファンカラティーナ」を37曲ピックアップしてお届けしました。

  1. ロートスの果実 -夢楽樹/中原めいこ
  2. CRESCENT PIERCE/小林泉美
  3. ときめきトゥナイト/加茂晴美
  4. 夜はカクテル/S-KEN
  5. 灼熱魔術団/榊原郁恵
  6. まんぼでGANBO!/Tu-Tu パンツの穴シスターズ
  7. あの娘I・N・G/M-BAND
  8. 天気予報を聞いてごらん/松本ちえこ
  9. フルーツ・パフェ ONE NOTE SAMBA/小林泉美 & Flying Mimi Band
  10. 世界を売った女神達/JAGATARA
  11. パパはマンボがお好き/大空はるみ
  12. SU・TE・KI/麻倉未稀
  13. サテンサンバ72/早見優
  14. 太陽がいっぱい/松本伊代
  15. 光の中で振り向くわたし/石野真子
  16. 秘密のガーデン/酒井法子
  17. 虹のマジック/渡辺満里奈
  18. 星空のディスコティック/浅香唯
  19. ココナッツ・ドリーム/小泉今日子
  20. パッセージ/工藤静香
  21. 口唇緊張あと5cm/森尾由美
  22. 8番目のパートナー/森川美穂
  23. 蜂蜜池のミステリ-/笠原弘子
  24. 月夜の晩には/南佳孝
  25. 避暑地の出来事/荒井由実
  26. 走れラビット/鈴木茂
  27. くすりをたくさん/大貫妙子
  28. パイナップル・ベイビー/HOLD UP
  29. クリスタル・ハネムーン/桑江知子
  30. 皆殺しのハレルヤ/庄野真代
  31. ハレーション/松原みき
  32. 個室/中原理恵
  33. マヤマヤビーチ/金井夕子
  34. 星のカリプソ/小森田実
  35. ハッピー2・ダンス/YASU
  36. アニマルサマーの夏が来る!/NEOちゃっきり娘
  37. Storm in lover/絢瀬絵里(CV.南條愛乃)、園田海未(CV.三森すずこ)

この記事が和モノ・ファンカラティーナ鑑賞のきっかけになったら何よりです。

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kinuzure

人生の大半の時間を中古盤DIGについやしてきたポップスマニア。いまだに大人になれていないクリスタルな四十路男。【来歴】1980年代、幼少期にAORと歌謡曲を聴いて育つ。 海外のAORを数多く聴いていたものの、あるとき「AOR歌謡」を発見。強く惹かれる。【好物】レコード/古本/1980年代/生クリーム/コーヒー/ウィスパーボイス/ディミニッシュコードの響き

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