AOR歌謡レビュー

石川秀美「Summer Breeze」で80'Sのそよ風を体感!|シティ・ポップ名盤

サマーブリーズのアイキャッチ

今回は石川秀美の「サマー・ブリーズ」を紹介します。

「さわやか天使」のキャッチフレーズでデビューした石川秀美の真骨頂ともいうべき本盤は、アイドルポップス・ファンのみならず、80年代シティ・ポップのファンからも厚い支持を得ています。

どんな作品なのか詳しく見ていきましょう。

石川秀美4枚目のアルバム

本盤「サマー・ブリーズ」は1984年7月21日に発売された石川秀美の通算4枚目となるオリジナルアルバムです。

CDは廃盤、音楽配信サービスでも未配信ながら、シティ・ポップ・ファンからは名盤と名高い作品。

デビュー当時からサポートしていた作曲家・小田裕一郎に加えて、林哲司が参加したことで、オシャレ度とさわやかさがグンと増しています。

さらに松本隆が82年のデビュー盤「妖精」以来、久しぶりに2曲の歌詞を提供しているのも見逃せません。

歌詞の世界観がポップな魅力を何倍も引き上げています。

石川秀美「サマー・ブリーズ」のオススメポイント

本盤のオススメポイントは次の3つです。

  • 林哲司による「そよ風サウンド」
  • ハネたリズムで体感する常夏
  • カラフルな世界観

順番に確認していきましょう。

林哲司による「そよ風サウンド」

本盤には林哲司が楽曲を4曲提供しています。

この時期の林哲司といえば、1983年のオメガトライブ「SUMMER SUSPICION」、1984年の菊池桃子「SUMMER EYES」といったヒットによって夏を感じさせるサウンドを確立していました。

その勢いに乗って作られた3曲はどれもさわやかな「そよ風」を感じさせる音になっています。

「サマー・ブリーズ」の看板に偽りなしです。

ハネたリズムで体感する常夏

ミディアムグルーヴにシャッフルビート、ラテン、ボサノバまで、本盤には夏を感じさせるハネたリズムの楽曲が多く収録されています。

真夏に聴くのはもちろん、冬に聴いてもOK。

再生した瞬間、まぶしい太陽の光が見えてきます。

カラフルな世界観

たった2曲ながら松本隆が作詞で参加したことにより、夏の風景に広がりと奥行きが与えられています。

通常、夏というと海や空の青がイメージとして描かれますが、松本隆が本盤の1曲目に描いたのは「ストロベリー・シェイク」。

淡いピンク色です。さらに2曲目は「はちみつテイスト」。黄色ですね。

こうした青以外の色を冒頭で視覚的にイメージさせることで、そのあとに他の作詞家が描く海や空の青がより鮮やかに浮かんでくる。

松本隆のちょっとした「仕掛け」は、結果的にカラフルな世界観を持ち込んでいるわけです。

石川秀美「サマー・ブリーズ」全曲解説

石川秀美「サマー・ブリーズ」を全曲解説していきます。

ストロベリー・シェイク

エルボウ・ボーンズ&ザ・ラケッティアーズの「ナイト・イン・ニューヨーク」をサマーリゾート仕様に変形させた「ストロベリー・シェイク」。

イントロからウキウキする。

この弾むようなリズムの楽曲に「ガラスの外は/雨色の海/これじゃ灼けないね/ちょっぴりブルーな/夏のバケーション」なんて歌詞を乗せる松本隆はさすが。

はちみつテイスト

アイドル歌謡に「What a Fool Believes」のリズムが隠しフレーバーになったクワトロフォルマッジ・ピッツァ的な甘くとろけるような一品。

曇りのちときどき晴れ

シティ・ポップのファンには知られた存在の滝沢洋一による提供曲。

当時AOR界で人気が高まったマイケル・ジャクソンfeat.ポール・マッカートニーの「The Girl Is Mine」風のリズムが涼しい。

夏のフォトグラフ

ロネッツ「Be My Baby」のリズムを軸にして作られたスローソング。

そこからリズムが変化して、メロディも憂いを感じさせるコード進行の上に乗るのがアルバムの中盤にふさわしい。

空にシュプール

ゆったりとしたシャッフルビート。

ところどころに挟まれるディミニッシュコードの響きが心地いい。

微熱・サマーコールド

軽快なリズムがひんやりした風を運んでくれる。

ブルーノート・スケールが組み込まれているので渋みも。

そよ風のエアメール

本盤のハイライト。林哲司によるシティ・ポップど真ん中の音。

ブリージーなギターカッティングからスタートするイントロがたまらない。

どことなく、松田聖子の「小麦色のマーメイド」を意識したようにも。

アレンジは入江純

プールサイド・シネマ

8ビートとサックスの音が夏の暑さを体感させる。

ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「The Heart Of Rock & Roll」をライトにしたようなアレンジ。

ワイキキまでSAILING

アルバムの終盤をラテンのリズムで盛り上げる。

これまでの路線を継承しながら、よりリズムを強化しています。

SUMMER RAIN

林哲司によるリズムのハネたボサノバ。

マイナー調のボサノバにありがちなm7b5に行って下降していくだけのコード進行になっていないのがさすが。

石川秀美のプロフィール

ここで石川秀美のプロフィールを紹介しておきます。

石川秀美は1966年7月13日生まれ。

1981年に第2回西城秀樹の弟・妹募集全国縦断オーディションで優勝したのをきっかけに芸能界入りを果たしました。

デビュー当時のキャッチフレーズは「さわやか天使」。

「花の82年組」と呼ばれたアイドルの一人でもあります。

1990年、薬丸裕英との結婚を機に引退。

最後に主演したドラマは「おむこさん」。主題歌「Lucy」も歌いました。

おわりに

今回は80年代シティ・ポップのファンからも人気の高い石川秀美の「サマー・ブリーズ」を紹介しました。

本盤の総評は次のとおりです。

本盤は音楽配信サービスで未配信です。

聴いてみたい場合は中古盤の店、フリマアプリなどで探しましょう。

あわせて読みたい
  • この記事を書いた人

kinuzure

人生の大半の時間を中古盤DIGについやしてきたポップスマニア。いまだに大人になれていないクリスタルな四十路男。【来歴】1980年代、幼少期にAORと歌謡曲を聴いて育つ。 海外のAORを数多く聴いていたものの、あるとき「AOR歌謡」を発見。強く惹かれる。【好物】レコード/古本/1980年代/生クリーム/コーヒー/ウィスパーボイス/ディミニッシュコードの響き

-AOR歌謡レビュー