AOR歌謡レビュー

加藤有紀「謎はと・か・な・い・で」のウィスパーボイスに癒されろ【シティポップ名盤】

加藤有紀

今回はシティ・ポップ好きとウィスパーボイスの歌謡曲好きにオススメの一枚、加藤有紀の「謎はと・か・な・い・で」を紹介します。

メジャーセブンスやテンションコードを多用したオシャレな曲や、グルーヴ感たっぷりの演奏が堪能できる本盤。

数年前にCD化し、現在はサブスクリプションでも配信されています。

これもまたシティ・ポップ再評価の賜物でしょう。ありがたい。

加藤有紀「謎はと・か・な・い・で」とはどんなアルバム?

加藤有紀の「謎はと・か・な・い・で」は、1983年発売の1st「Twilight Dream」と2nd「Love Potion」の2枚のアルバムがひとつにまとめられた作品です。

両作品が出た1980年代前半といえば、世は「女子大生ブーム」でした。

このブームの影響で人気を博したのが、ラジオ「ミスDJリクエストパレード」のDJを務めた川島なお美や、オールナイトフジに出演していたオールナイターズといった「女子大生アイドル」たち。

加藤有紀もそんな女子大生アイドルの1人だったのです。

とはいえ、楽曲を的確に解釈して歌う感性のするどさが他とは一線を画していました。

簡単に加藤有紀のプロフィールを紹介しましょう。

加藤有紀のプロフィール

加藤有紀は1961年6月23日東京生まれ。

1982年、慶応義塾大学経済学部在学中に「トワイライト・ドリーム」でトリオレコードからデビューしています。

歌手としてデビューしながらも、本当は小説家を目指していたとか。

1983年にはラジオや学園祭で活躍するもそれ以降、次第に活動が途絶えます。

歌手としては「Twilight Dream」(1983年)と「Love Potion」(同年)のわずか2枚のLPしか残していません。

加藤有紀「謎はと・か・な・い・で」の聴きどころ

加藤有紀のリリースした2枚のLPをまとめた本盤「謎はと・か・な・い・で」は、実質的なコンプリート・コレクションです。

本盤のオススメのポイントは次の3つ。

  • シティ・ポップど真ん中な音
  • カシオペアによる強力な演奏
  • バリエーション豊富なウィスパーボイス

ひとつずつ見ていきましょう。

シティ・ポップど真ん中な音

2010〜2020年代にトレンドとなったシティ・ポップ。

本盤の音は、そんなシティ・ポップ好きにピッタリの内容です。

メジャーセブンスやテンションコードを多用した曲にドライな歌詞。

グルーヴ感たっぷりのギターカッティングに、清涼感のあるコーラス。

山下達郎の「いつか」をモロに意識した曲なんかもあって。

とにかく曲のクオリティーが高いのです。

それもそのはず、作家陣には和泉常寛、小田裕一郎らが名を連ねています。

知る人ぞ知る作品にしておくのはもったいない出来です。

カシオペアによる強力な演奏

曲のクオリティーが高いと先述しましたが、本盤は演奏もハイレベルです。

バックを務めたのはカシオペアの面々。これだけで、演奏のクオリティーは担保されています。

彼らが中心となって作られた亜蘭知子のアルバム「MORE RELAX」が好きならハマること間違いなしの音です。

バリエーション豊富なウィスパーボイス

「ミスキャスト」のクールでドライなウィスパーボイスで幕を開けます。

かと思えば、中盤からしっとり感が出てきます。

「BLACK JACK」は吐息の温度が感じられるくらい湿ったウィスパーボイス。

アンニュイな雰囲気を演出しています。

加藤有紀「謎はと・か・な・い・で」のオススメ曲

加藤有紀「謎はと・か・な・い・で」のオススメ曲を紹介していきましょう。

【1 ミスキャスト】

16ビートの朝の光が見えてくるようなやわらかい音空間。

そこにふわふわ漂う、耳打ちするかのようなウィスパーボイスにぞくぞくさせられます。

【2 クールなままに】

和泉常寛提供のアイドル歌謡的なスイートな歌メロを、絶妙なコントロールのウィスパーボイスで歌いこなしています。

「エンディング 消えた後のレコードの上を 針がいつまでも回ってる」の歌詞のアンニュイさと歌の相性はバッチリ。

【3 海にはこないわ】

演奏がラテンテイストながら、ウィスパーボイスがほどよい脱力感をかもし出しています。

後半の「パヤパヤパッパーヤパ」のハミングも間が抜けずクール。

【4 STILL, STILL, STILL】

山下達郎の名盤「RIDE ON TIME」の1曲目「いつか」にならったと思われるベースラインでスタート。

そこに乗るのはマイナー調の哀愁感のある歌メロ。

演奏は完璧なシティ・ポップ、歌はAOR歌謡として味わい深い。

作詞:竜真知子/作曲:小田裕一郎コンビによる作品です。

【6 BLACK JACK】

24丁目バンドを思わせる演奏に、歌謡曲的な湿り気を帯びたセクシャルなウィスパーボイスが絡みます。

AOR歌謡としては申し分のない出来です。これも和泉常寛作曲。

【8 TWILIGHT DREAM】

演奏だけ聴くとスティーリー・ダン風。そこに哀愁を感じさせる歌メロとわずかな湿度をふくむ歌が乗るとAOR歌謡に。

ここでは低音のウィスパーボイスが聴けます。

【13 Shyに愛して】

INDEEPの「Last Night A DJ Saved My Life」をモティーフにしたブラック・コンテンポラリーなバックトラックにブルーノートとヨナ抜きが行きかう歌謡曲的な歌メロを乗せる感覚は、80年代初頭にはまだ早すぎたか。

実は早見優「急いで!初恋」などのアイドルソングのほか、アニソン、CMソングなども多数手がけた小杉保夫による提供曲。

【14 Cafe Noirでひといき】

ラー・バンドやイザベル・アンテナのようなヨーロッパ的感覚のボッサテイストの楽曲。

サウンドとウィスパーボイスとの相性が抜群でとにかく心地いい。

【15 Love Potion】

早瀬優香子を先駆けたかのようなハイトーンのウィスパーボイスを披露。

聴くものを吐息で妖しい呪文にかける媚薬です。

【16 タ・イ・ク・ツ】

ふたたびヨーロピアンなボッサテイスト。

山川恵津子のペンによる気だるそうに低音でささやくクリスタルな一曲。

【17 誤解】

タイトなグルーヴをバックに哀愁を帯びたメロディーをややしっとり歌う。

AOR歌謡としてはもう少し低音で歌った方が締まった気がしないでもない。

もう少し続けていたら勘所を押さえられたと思うと残念でありません。

おわりに

今回は加藤有紀の「謎はと・か・な・い・で」を紹介しました。

本盤のオススメのポイントは次の3つ。

  • シティ・ポップど真ん中な音
  • カシオペアによる強力な演奏
  • バリエーション豊富なウィスパーボイス

【加藤有紀「謎はと・か・な・い・で」の総評】
※星5つで満点

時代性 ★★★
演奏  ★★★★
独創性 ★★★
楽曲  ★★★★
歌   ★★★★

本盤は数年前にCD化、現在はサブスクリプションでも配信されています。

気になったら一聴をどうぞ。

  • この記事を書いた人

kinuzure

人生の大半の時間を中古盤DIGについやしてきたポップスマニア。いまだに大人になれていないクリスタルな四十路男。【来歴】1980年代、幼少期にAORと歌謡曲を聴いて育つ。 海外のAORを数多く聴いていたものの、あるとき「AOR歌謡」を発見。強く惹かれる。【好物】レコード/古本/1980年代/生クリーム/コーヒー/ウィスパーボイス/ディミニッシュコードの響き

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